本研究の目的は、日常臨床において設計上困難さを伴う下顎遊離端欠損症例を念頭に、鉤歯が歯周疾患を持つという想定の下での各種光弾性模型を作製し、鉤歯周囲の骨内部応力を検討し鉤歯などをより長期に保存するための部分床義歯設計上の新しいガイドライン確立の基礎資料を得ることである。 今年度は、歯槽骨欠損に着目し、隣接する側切歯、犬歯、および第一小臼歯に対して幾つかの支持歯槽骨欠損を持つ光弾性模型を製作した。すなわち、垂直性骨吸収では、クレーター状の骨欠損と樋状の骨欠損を有する2種類、加えて、水平性骨吸収はその程度による20%の水平吸収と35%の水平吸収の2種類、合計4種類である。そして、それらの残存歯それぞれに垂直方向と近心方向荷重を0poundから20poundまで加えた時の荷重伝達特性について、健常模型を基準に比較検討した。 その結果、1)垂直荷重時の応力集中は、歯の特に荷重部、臨床的歯頚部および根尖部周辺に観察された.また、それぞれの歯および支持歯槽骨に出現した等色線フリンジ・パタンは垂直性と水平性骨吸収で異なった傾向を示したが、ともに骨欠損の大きいトラフ模型および35%模型においてより強く、かつ広範囲に見られた。2)近心荷重を加えたときの応力集中は、その出現部位が垂直荷重と比べて荷重された歯だけでなく、燐在歯の歯頚部付近や根尖周囲にも見られ、広範囲に出現した。また骨欠損の大きいトラフ模型および35%模型において、より強い応力集中を示し、さらに、その時間的推移は、最初に欠損部に見られ、それから他の支持組織に拡大する傾向を示した。 この様に、垂直性及び水平性骨吸収において、歯槽骨欠損の程度の大きいほど応力集中が強く、広範囲に観察され、燐在歯への影響の大きいことが示唆された.
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