高齢化社会を迎え、各種の歯槽骨欠損を持った残存歯を利用しての補綴治療は、今後ますます多くなるものと思われる。中でも遊離端欠損の補綴処置にあたっては、支台歯等に骨欠損を有する場合、生体力学的調和を得るための工夫がより重要なものとなる。そこで、種々の骨欠損を持つ下顎遊離端義歯の支台歯周囲の骨内部応力を検討し、支台歯等を長期に保存するための部分床義歯設計上の新しいガイドライン確立の基礎試料を得ることを計画した。 本研究では、1)この様な複雑な条件の下での骨内応力を調査するため、擬似三次元光弾性法の、特に観測・記録部に改善を加えた新しい応力解析システムを開発した。また、2)以下の様な各種の光弾性模型を作製し、歯および歯槽骨内部応力の比較検討を行った。 具体的には、i)432残存で、各種の垂直性および水平性骨吸収を持った模型(垂直性骨吸収では、クレーター模型とトラフ模型、水平性骨吸収では20%吸収模型と35%吸収模型である。)。ii)44鉤歯に、中等度の垂直性骨欠損を有する765567欠損の模型を始めとする各種の両側遊離端欠損を想定した模型等々である。 そして、荷重条件(荷重量、荷重方向)、連結歯数および維持装置等を変化させた時の荷重伝達特性について、健常模型に生じる等色線フリンジパタンを基準に比較検討した。 その結果、1)同一荷重条件の下では、最も大きな骨欠損部に、最も強い応力集中が広範囲に観察された。2)水平性骨吸収と垂直性骨吸収ではそれぞれの歯および支持歯槽骨に出現する等色線パタンは異なった傾向を示した。3)歯槽骨欠損を持った鉤歯への応力集中をより効果的に分散させるための連結歯数は3歯連結を基本に行うこと、4)鉤歯への応力集中をより均等に分散させるための維持装置としては、I・バ-クラスプが有効であった。等の成果を得た。
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