骨芽細胞に対する荷重負荷の影響を解析するため、クリノスタットを用いた模擬微小重力(荷重除去)や遠心培養した過重力(荷重負荷)の環境でマウス頭頂骨由来の骨芽細胞であるMC3T3-E1細胞を培養した。骨芽細胞は、その細胞増殖率が負荷除去では50%程度阻害され、荷重負荷した場合は20%程促進される。一方、同じ条件で培養したヒト子宮癌腫由来のHeLa細胞は、その細胞増殖の抑制は、10-15%であり、荷重の変化に対して骨芽細胞であるMC3T3-E1細胞の方が感受性が高いという結果が得られている。また細胞増殖関連遺伝子の1つであるc-fos遺伝子のmRNA量は、負荷を除去した細胞では対照群の細胞と比較して約20%減少し、荷重負荷した場合は上昇すること、また、c-mycの発現量も荷重負荷により影響を受けることが新たに判明した。このため、様々な荷重条件で培養した骨芽細胞の遺伝子発現を、現在RT-PCR法で検討している。一方、細胞をDNA合成阻害剤であるアフィディコリンで処理して、その細胞周期を同調させた後、時間経過を追って培養細胞の細胞周期をフローサイトメトリーで解析した。その結果、荷重変化させた環境下で培養した骨芽細胞は、S期(DNA合成期)の進行に影響を受けることがわかった。すなわち、荷重負荷の培養条件S期の進行が促進され、負荷除去の環境では、S期の進行が遅延した。このことから、細胞のDNA合成や分化と密接な関係にあると考えられている細胞間質と細胞の接着因子であるインテグリンなどの局在や発現等を解析する必要性が生じた。これらの細胞接着物質に違いが認められれば、レセプター(接着因子)からDNA合成および細胞分化への遺伝子発現調節に至るシグナルトランスダクションを解析するための、新しい実験系が開発できる可能性が示唆されたため、その局在や発現量の変化を現在解析している。
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