研究概要 |
1.MMA重合系の誘導期間による各種抗酸化剤のラジカル捕捉効果の研究 ビタミンEのラジカルスキャベンジ効果を明らかにするため、重合開始剤として過酸化ベンゾイルおよびα,α-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いてビタミンE、その関連化合物,の存在下示差走査熱量計、DSCで70℃所定時間メチルメタクリレート(MMA)加熱重合を行い,DSCサーモグラムより時間重合率曲線を描記し誘導期間、初期重合速度(IRP)を求めた。BPOシステムにおいてフェノール化合物の誘導期間は濃度依存性を示し、濃度の増加に伴って、誘導期間は増加した。その値は次ぎのように減少した。ブチルヒドロキシトルエン>フェノール>ビタミンE..以上のことからビタミンEは重合遅延剤(抑制剤)と結論された。次ぎにβ-カロチン,all-trans-retinolについても同様に検討した。これらは濃度が増すと、重合反応が抑制された。明らかな誘導期間が存在せずしかも初期重合速度が大きく減少する重合挙動を示した。類似化合物のレチノールもカロチン同様の挙動を示したがカロチンより変化は小さかった。β-カロチンとビタミンEは明らかに異なる挙動を示したのは、ビタミンEのフェノール性OH基による連鎖切断型ラジカル捕捉作用とβ-カロチンの共役二重結合部へのラジカルトラップ作用の差によるものと考えられた。 2.レジン重合光増感剤のフリーラジカル生成による細胞障害性 可視光線照射による増感剤(カンファキノン、CQ)と還元剤(ジメチルアミノエチルメタクリレート、の化学反応により重合開始される。これら光感受性物質により誘起される生物学的反応を検討するため、培養細胞としてA-431ヒト類表皮細胞を用いラジカルによる細胞障害の影響とそれを予防する抗酸化剤添加の影響を検討した。 1)増感剤の違いによる細胞障害の影響 9-フルオレノン(9),ベンゾフェノン(BP),CQの光照射による細胞障害は9F>BP>CQの順に障害性が減少した。重合禁止剤ハイドロキノン(HQ)を添加すると、細胞障害性は有意に減少した。 2)各種抗酸化剤のラジカル捕捉作用におよぼす影響 ラジカル捕捉剤としてビタミンE.ビタミンC,β-カロチン,L-cysteineなどについて検討した。これら非添加群の細胞生存率より有意に生存率は大きくなった。
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