本研究では、硬質レジン前装チタンクラウンを製作するために必要な、チタンに対する市販硬質レジンシステムの有するプライマーの接着性について検討を行った。その結果、チタン表面上の不動態皮膜は接着性に非常に有利に働き、未処理のチタン板に対し、高い接着性を得られることが認められた。しかし、チタン補綴物は通常歯科鋳造法によって作製されるため、被着面が埋没材との焼き付きや酸化皮膜で汚染される。このため、ノンリテンションビーズシステムによる硬質レジン前装冠作製を目指して、サンドブラスト処理による影響について検討した。その結果、アルミナ粉末による5秒のサンドブラスト処理によっても、EDX分析によって処理面上には15〜20wt%のアルミニウムが存在することが判明した。このアルミナの有する接着性はチタンの有する接着性に比べ劣ることが認められたため、サンドブラスト処理はチタン補綴物の接着性に影響することが判明した。このことから、本年度では、チタン被着面に対する表面処理法や他の加工処理面との接着性についても検討する予定である。 また、硬質レジン前装冠のメタルフレーム上にはリテンションビーズによる維持装置が用いられる。このため、チタン鋳造によるリテンションビーズの再現性について検討したところ、鋳造性についてはほぼ満足できる結果を得られたが、チタンと埋没材との焼付きが認められた。このため、鋳造によって得られたチタン被着体が接着性にどのような影響を及ぼすが、検討を加える予定である。 硬質レジン接着システムには、オペークレジンによる金属色の隠蔽が必要とされ、接着性にも大きく影響する。このため、本年度購入した粘度計を用いて、オペークレジンの粘度特性を調べ、接着性に及ぼすオペークレジン組成ならびに酸化チタン粉末の試適含有量等について検討する予定である。
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