研究概要 |
チタン基板との密着性に優れたリン酸カルシウム薄膜-チタンインプラント材の開発をめざして、Ion Beam Dynamic Mixing(IBDM)法を用いてTi基板に厚さ約1μmのリン酸カルシウム薄膜をコーティングした試料について、前年度明らかになったコーティング後の熱処理法条件を参考にコーティング材の細胞培養試験を行った。また、チタンへの唾液タンパクの吸着特性を検討した。 1)前年度において、コーティング膜とTi基板との密着性を損なわずにリン酸カルシウム膜の溶解性を制御するためには,赤外線加熱のような急速加熱方式により出来るだけ短時間に熱処理を行う必要性が示唆され,溶解性の大きな膜を得るためには600℃以下の低温での急速加熱が,溶解性の小さな膜を得るためには700℃程度の急速加熱が適していることが明らかになった。以上より今後の細胞培養試験、動物埋入試験の(1)溶解度の大きな条件として400〜500℃の赤外線急速加熱、(2)溶解度の小さな条件として650℃の赤外線急速加熱、を設定した。 2)チタン円柱側面にリン酸カルシウム薄膜をコーティングした試料を用いて、主にラット骨芽細胞による細胞培養試験を行った結果、(1)擬似体液での膜の溶解挙動と細胞が存在する環境下での膜の溶解挙動は異なった。(2)骨芽細胞の細胞動態は表面性状によって異なり、溶解性の小さな(結晶性の大きな)コーティング膜上で優れた細胞増殖率を示した。 3)チタンへの唾液タンパクの吸着挙動は、Hydroxyapatiteへのそれとは大きく異なり、アルブミン、アミラーゼが特異的に吸着した。
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