研究概要 |
1.チタンおよびチタン合金を用いた補綴物の接合には,チタンろう材によるろう付が望ましい.そこで,ろう付を行うためのチタンろう材について,その組成およびろう付強さを測定した.組成分析には,波長分散型X線マイクロアナライザーを用いた.ろう付方法は,純チタン棒(3種)を用いて,赤外線ろう付器によりアルゴンガス雰囲気中で行った. その結果,現在市販されているチタンろう材は,Ti,Ni,Cuなどからなり,その構造はTiとNi-Cu合金を積層した積層ろう材であった.ろう材組成は,Tiが50〜67wt%,Niが17〜30wt%,Cuが17〜20wt%の範囲であった.これらのろう材のろう付引張強さは,392〜516MPaの範囲の値を示した. 2.チタンろう材6種の耐食性を評価するために,0.1M塩化ナトリウム溶液中におけるそれぞれの分極挙動を電位走査法によって検討した。その結果,銅含有量の高いろう材では,アノード走査の酸化電流よりもカソード走査のそれが大となり,孔食の危険性が認められた。銅含有量の低いろう材では,酸化皮膜の存在によって,酸化電流が著しく低下し,銅の溶出が少ないものと考えられた。一方,Ni含有のろう材では,Niの溶出が疑われた。 3.Ti-Zr-Cuからなる,20種類のろう材の作製を試みた.その結果,赤外線ろう付器で溶融できる組成は,Tiの配合量が55wt%以下であった.試作ろう材で,最も大きいろう付引張強さを示した組成は,Ti50-Zr25-Cu25であった.このろう材のろう付引張強さは,492.7MPaを示し,現在市販されているチタンろう材と同等の値を示した.
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