抗菌性ポリマーの歯科材料への応用として、一つはメタクリ酸メチルに代表されるレジン系材料、もう一つはポリカルボン酸に代表されるアイオノマー系セメント材料の二通りを考えた。本年度は後者の水溶性高分子に主眼をおき実施計画の抗菌性ポリマーの調製、抗菌性試験の評価法について検討した。本研究の目的のポリマーは、抗菌性の発現となるホスホニウム塩をもつモノマーを用い、そのホモポリマーならびにアクリル酸との共重合によりホスホニウム塩を側鎖にもつアイオノマーの調製を検討した。本分子はモノマーでは抗菌性を示さず、高分子となり初めて抗菌性を有する。一方、上述のポリマーの合成と平行して、抗菌性(菌の細胞から見た場合には毒性と考えられる)の評価法の確立について検討した。すなわち、抗菌性(毒性)の有無という評価だけでなく、細胞あるいは分子レベルの評価も今後重要と考えられるためである。また、この抗菌性を評価する際のいくつかの問題がある。たとえば、分子量の異なる分子を細菌と接触させる場合、分子反応としてとらえるモル量の接触、あるいは実験系の体積割合としてとらえる容量(重量)割合の接触の二通りがある。本年度は、この点を明らかにするため、まず分子量の異なるポリアクリル酸を調製し分子量の違い、接触させる濃度等の基礎的検討と細胞毒性試験ならびに試験後の解析法の確立を行った。解析法としては、細胞由来の酵素活性、電気泳動による細胞内外のタンパク質の解析等を行い、それらの検討が可能となり分子量の差により毒性や細胞中のタンパク質に差が生じることが分かった。
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