歯科用レジン材料に抗菌性の機能を付与し、口腔内の歯垢形成や細菌付着などの抑制を目的とし、高分子ホスホニウム塩を検討した。ホスホニウム塩モノマーは、トリブチル(4-ビニルベンジル)ホスホニウムクロライド(V)用い、比較として、四級アンモニウム塩のメタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(M)およびアクリル酸(A)を用いた。各モノマーおよびそれらのポリマー(PA、PM、PV)のS.mutans菌に対する抗菌性を検討した。その結果、抗菌性の効果はA、PA、そしてMはほとんどなく、PMとVにはやや認められ、PVはこれら化合物の中で最も優れた効果を示した。 また、メタクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)との8対2のモル比の混合モノマーにVおよびMを溶解し、共重合体を調製した。VおよびMの溶解量は、Vは3モル%、Mは1モル%であったので、調製した共重合体は、Vの場合は1、2、そして3モル%(CV1、CV2、CV3)、Mの場合は1モル%(CM1)であった。なお、VおよびMを含まないMMA/HEMA共重合体をコントロール(C)とした。直径10mm、厚さ1mmの各共重合体をS.mutansを加えた培養液3ml中に浸し、37℃、24時間培養した。その結果、共重合体CV1、CV2の細菌の付着量は、CおよびMに比べ少なく、有意の差が認められた。 一方、各共重合体の圧縮強さおよび曲げ強さは、VおよびMの添加量と共に減少し、VおよびMの違いによる差はなかった。たとえば、VおよびMを1モル%含有した共重合体で、圧縮強さは約10%、曲げ強さは約20%減少した。
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