研究概要 |
これまで我々は,顎機能異常,その中でも特に筋過緊張とクレンチングに代表される持続的咬みしめとの関係に着目し研究を行い、クレンチングにともない閉口筋運動ニューロンの興奮が維持されることなどを明らかにしてきた。 平成7年度は咬合力調節機能にとって重要な役割を演ずる,いわゆる歯根膜咬筋反射の様相と,この反射のクレンチング後における動態について観察を行い以下の結果を得た.第1に,上顎中切歯に与えた2から3ニュートン前後の弱い三角波による機械的刺激により咬筋に誘発される反射応答は,興奮性応答,初期抑制性応答,後期抑制性応答がそれぞれ有意な3つのタイプが観察された.第2に,これらいずれのタイプであっても,クレンチング後における興奮性の増強が観察されたこのことから,クレンチング後における歯の接触は,咬筋の活動性をさらに上昇させる因子となりうることが示唆された. 平成7年度における実験で得られた結果は,歯根膜受容器の刺激により咬筋に誘発される反射性応答に関して従来報告されている結果と以下の点では相違がみられた.第1に,抑制性応答,ならびにそれに引き続いて誘発される興奮性応答については,我々の実験でも同様に認められたが,さらに潜時の遅い抑制性応答については今回の研究で初めて観察された現象である.第2に,短潜時の抑制性応答は機械刺激の立ち上がり時間に関連し,急峻な刺激で誘発されるとする説に対し,今回の我々の用いた機械刺激の立ち上がり時間が遅く,また刺激強度が低いにもかかわらず抑制性応答が観察される例があった. 反射性応答を誘発させるためにはあらかじめ背景活動を高めておく必要があるが,平成8年度では背景活動を昨年度よりさらに上昇させて,クレチング後に反射応答の上昇が認められるかを確認するとともに,また応答変化の程度を定量的に比較することが必要である.
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