12%金パラジウム銀合金は歯科用金合金に比較して靱性が小さく、破壊しやすいなど機械的性質への信頼性が劣ることが指摘されている。合金の硬化理論において、金合金では規則化時効の論拠を置いた硬化理論で確立されている。一方、12%金パラジウム銀合金の硬化は750℃で20〜30分間加熱急冷後300〜400℃で10〜20分間加熱冷却して均一な合金から別の結晶を析出させて硬化させている。しかし、この硬化機構については未だ不明の点も多く合理的な熱処理条件とは言い難い。すなわち、800〜830℃で12%金パラジウム合金を30分間加熱急冷すると軟化せず、従来の時効硬化で得られている以上の引張強さを発現することを確認している。このように時効硬化と固溶硬化の両方を示すもので、この現象は組成中の銀銅比が熱処理による機械的性質に大きく影響していると推察している。この推論を確認するために12%金パラジウム銀合金中の銅量の比率を増量して、共晶線内に入れた25%銅量の合金を試作してその熱処理効果を検討し次の結果を得た。 1)12%金パラジウム銀銅合金ではその組成をAg-Pd-Cu三元系状態図中の中で共晶線上に求めることで時効域および固溶体硬化域にて靱性を与えることができた。本試作合金は市販品と比較した場合、時効ピークにおける伸びが15%から22%へと向上した。 2)熱分析の結果、銅の増量により液相温度が低下した。 3)本試作合金は亜鉛を2%添加することにより材質脆化を呈した。しかし、炉外空冷処理することで強さは犠牲になるが靱性は向上することが判明した。
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