本年度は、主に自由曲面の形状変化にともなう光造形装置の最適な製作条件と輪郭抽出アルゴリズムの改良を中心に作業を進め、以下に示す成果を得た。 1.被験者の顎運動測定は、徳島大学歯学部歯科補綴学第二講座(坂東研究室)の協力を得て実施できた。測定した顎運動データは、切歯点の限界運動が対象で、データの分布密度に偏りを生じており、実体モデルの製作には顎位の推定が必要である。 2.測定データの解析は、6自由度顎運動が処理可能なソフトウェアを開発した。本ソフトウェアでは、特異な顎位は視覚的に抽出でき、切歯点ならびに左右顆頭展など多数の部位で同時に動きを観察することが可能で、顎位の構成要素も求められる。 3.光造形装置の最適な製作条件は、個々の製作物の曲面形状によって異なる。特に本研究で対象とした自由曲面をもつ実体モデルの製作では、加工形状の違いによって加工時の歪が異なり、高精度な実体モデルの製作には加工歪を考慮した製作方法をとらなければならないことがわかった。 4.測定データからの輪郭抽出は、独自の抽出アルゴリズムを考案した。このアルゴリズムの考案によって、複数の断面や空洞をもつ複雑な実体モデルが製作可能となった。 5.本年度は、顎関接の形態情報と下顎運動情報を高精度に結合し、任意の顎位における実体モデルを製作して、骨形態の特徴とその運動によって形成される運動範囲を明らかにした。 以上、本年度の目標はほぼ達成でき、得られた成果は日本補綴歯科学会、日本顎口腔機能学会、日本ME学会等で発表した。
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