義歯床用レジンのプラーク付着を抑制する目的で、抗菌活性を有するメタクリル系モノマーを合成して、義歯床用レジンへのコーティング材としての応用を試みた。本年度は、抗菌性モノマーとして3種のメタクリル系モノマーを合成して、汎用メタクリルモノマーとの相溶性や硬化物の機械的性質の測定を行った。3種の抗菌性モノマーのうち2種は芳香族ヘテロ環を有するものでキノリン、イソキノリンと2-ブロモエチルメタクリレートから合成した4級化モノマーであり、他の1種はイミダゾールとグリシジルメタクリレートの開環付加物である。これらのモノマーは歯科で汎用されている他のメタクリル系モノマーとの相溶性も良好であり、他のモノマーと共重合系成分として十分使用可能であることが明らかとなった。また、エチレングリコール系ジメタクリレートとの共重合物の硬さは単独重合体よりも大きな値を示した。このことは合成したモノマーの基本骨格である環状構造が、硬化物の物性向上に大きく寄与しているものと推測された。これらの結果をもとに現在、3種のモノマーと汎用モノマーの共重合体について寒天培地を用いた阻止斑形成試験ならびに、人工プラーク付着率試験を行い、モノマーの抗菌活性を検討中である。また、前述の3種のモノマーの他に、イミダゾールの4級化モノマーの合成を行うとともに、メタクリル基の鎖長を延長したモノマーの合成も検討中であり、平成8年度にかけて総合的な検討を進める予定である。
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