研究概要 |
レジン床義歯へのプラーク付着を抑制する目的で,抗菌活性を有するメタクリル系モノマーを合成して,義歯床用レジン用モノマー成分として配合し,重合したレジンの抗菌活性についての評価を試みた.本研究では抗菌活性を有するメタクリル系モノマーとして,ヘテロ環を有するモノマーを選択し,数種のモノマーを合成した.合成したモノマーはキノリン骨格を持つもの2種,トリアゾール骨格1種,イミダゾール骨格2種,イソシアヌル酸骨格2種および脂肪鎖骨格を持つもの1種で,このうち3種のモノマーは塩素あるいは臭素で四級化したものである.抗菌活性の評価は市販の加熱重合型義歯床用レジンの液成分中に合成した抗菌性モノマーを所定の濃度で溶解混入し,通法で重合を行って試験体プレートを作製した.この試験体フレートをCandida albicansの菌液中に浸漬して付着した細菌数を計測することによって抗菌活性を評価した.四級化したモノマーおよびトリアゾール環を持つモノマーは抗菌性モノマーを含まない試験体に比べて,有意に細菌の付着数が減少し,抗菌活性がうかがえた.しかし,これら四級化したモノマーは極性が大きいために床用レジンのモノマーであるMMAなどのモノマーに対する相溶性に乏しく,単独ではきわめて低濃度しか溶解することができない.そのため,本研究では極性モノマーに溶解することによって,床用レジン中に配合した.しかし四級化モノマーはこのように使用に制約がある他,口腔内の水分による加水分解や溶出などに対する耐久性が不十分であることも懸念される.このため,抗菌性モノマーの分子設計にあたっては,非四級化構造のモノマーの選択が有望と思われる.本研究で合成した非四級化モノマーの抗菌活性については現在検討中であるが,一部のモノマーに菌増殖抑制効果が認められることから,今後より詳細な構造活性相関や濃度依存性についての検討が必要と思われる.
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