オトガイ頭頂方向エックス線写真撮影法を用いて、下顎枝矢状分割術を行った39症例の下顎頭長軸の角度変化と術前後における顎関節症状の変化との関連ならびに内側骨片の位置変化に伴う外側骨片の変化の予測について検討した。 1.下顎頭長軸の角度変化と術前後における顎関節症状の変化について 対象39例78関節において、術前に関節症状を有するものは24関節(31%)であった。手術による角度変化は、37例74関節において内方(0〜9.6度)に変化し、2例4関節で外方(-0.5〜-1.5度)に変化していた。術前後の関節症状の変化については、前後とも無症状;46関節(59%)、前後とも症状あり;14関節(18%)、術後症状消失;10関節(13%)、術後症状出現;8関節(10%)であり、それぞれ下顎頭長軸の角度変化は平均2.5度、3.8度、3.7度、2.5度であった。 以上の結果から、手術による角度変化と術後の関節症状に明らかな関連は見られなかったが、骨片の固定法に、生体の適応を期待した緩い囲繞結紮を用いているため、長期的な変化を観察している。 2.内側骨片の位置変化に伴う外側骨片の変化の予測と手術術式の選択 下顎枝矢状分割術による内側骨片の位置変化とそれによる外側骨片の位置変化について検討を行った。このことから、モデルサージェリーで求めた内側骨片の移動量を用いて、オトガイ頭頂方向エックス線写真上で術後の内外骨片の位置関係を予測し、骨片間に間隙が生じる場合にはEpker氏法を、また外側骨片を外方に圧排することが予想されるものに対しては、骨片の接触部位や程度により、Epker氏法や下顎枝垂直骨切り術を選択することが可能となり、臨床に応用している。現在は、術前に予測した位置と術後の位置とを比較し、予測の精度について検討中である。
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