研究概要 |
口腔粘膜および骨膜の伸展を図るため、Tissue Expanderを臨床応用するにあたり、下顎骨および上顎骨へのビ-グル犬挿入モデルを作成し、その伸展速度、サイズ、形状についての検討を行い、粘膜及び骨膜の伸展度、さらに伸展による骨膜の変化、近接する骨質自体への影響について肉眼的、組織学的観察を行った。 1.Tissue Expanderの顎骨挿入モデルの作成;下顎骨挿入モデルは、当初、10ccのレクタングルタイプのものを用い、頬側下顎骨体部にポケットを作成し、10ccの生食を4日おきに2.5ccずつ注入していったところ、粘膜骨膜に過度の緊張を引き起こし、粘膜の壊死を引き起こした。そこで注入の方法を変更し、7日おきに2ccずつ注入し、6ccの注入に止めたところ、感染や粘膜の壊死も起こらず良好な伸展が見られた(モデルA)。また、同時に2.5ccのラウンドタイプのものを挿入し、即時に2.5ccの生食を注入した(モデルB)。上顎骨挿入モデルは2ccのラウンドタイプのものを口唇粘膜より挿入し、頬側上顎骨体部にポケットを作成し、即時に2ccの生食を注入した(モデルC)。 2.粘膜骨膜の伸展度;上顎下顎すべてのモデルで付着歯肉の伸展がわずかに認められた。骨膜については良好な伸展が認められ、モデルAでは最大部で約2.5倍、モデルB,Cでは約2倍の伸展が認められた。 3.骨への影響;モデルAでは3週間に渡り注入を行ったが、近接する下顎骨に僅かな圧迫吸収が認められた。モデルB,Cでは注入して直後に屠殺したため、骨への影響はなかった。 4.組織学的観察;モデルAにおいてはTissue Expander周辺部は肥厚した線維性の被膜を形成し、骨模様の所見は認められなかった。モデルB,Cでは即時注入のためこのような変化は見られなかった。
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