平成7年度は1.解析装置の構築、2.解析方法、3.結果の発表を行った。 【1.解析装置の構築】以下の条件を満たすプログラムを作成し、解析装置を構築した。条件1:心電図信号から心拍変動を抽出し、心拍変動ゆらぎの時系列信号を得る。条件2:得られた心拍変動ゆらぎの時系列データから(1)基礎的統計量の算出、(2)CVRR、(3)パワースペクトル、(4)3次元アトラクターの再構成、(5)フラクタル次元の算出、を算出する。 【2.解析方法の検討】1.における解析処理のうちこれまで明らかになっていない(4)と(5)に関して、解析に必要なパラメータの決定を行った。すなわち、(1)最適な時間遅れτ→自己相関係数が初めて0になるように設定、(2)適切なデータ数→2000以上に設定、(3)相関指数νを飽和させるのに必要な埋め込み次元数→1から20までに設定、とした。 【3.結果とその発表】以上の結果を用いて、高齢者が歯科治療中に示した不整脈6例のカオス解析を行い、次の結果を得た。 1.心房細動のアトラクタは不規則で白色雑音様であった。また、その相関積分は収束する傾向を示さなかった。多発性の心房性期外収縮のアトラクタも心房細動に似た形態であった。2.著名な呼吸性不整脈は規則的な多角形のアトラクタを示した。3.多発性の心室性期外収縮は複数の規則的なアトラクタを示した。4.約60心拍の長周期の変動を伴う洞性徐脈のアトラクタは長く幅のある紡錐形の軌道を示した。以上の結果から、3次元アトラクタは高齢者の不整脈の解析に有用である。 この結果は平成7年度日本歯科麻酔学会総会(広島)において口演発表した。
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