歯髄の中には、知覚神経の自由神経終末が分布しており、歯の痛みを伝達している。痛みの発生機序としては、自由神経終末の侵害受容器に対する、セロトニン、ブラジキニン、ブロスタグランジンなどの内因性発痛物質の作用ほかに、最近、知覚神経の末端から分泌される神経伝達ペプタイドの痛みの発生に関与していることが明かとなった。現在、多くの神経伝達ペプタイドが発見され、それぞれ異なった作用が報告されている。Calcitioni Gene-relateceptede CGRP)は、もっとも血管拡張作用がある神経伝達ペプタイド(BARNES1991)であり、炎症の際の血管拡張に重要な働きを示すことが考えられている。一方、歯髄充血や歯髄炎の痛みは、血管拡張が痛みの原因である可能性がつよい。そこで本研究は、ヒト歯髄を対称として、神経伝達ペプタイド(SP.CGRP)の存在の確認と分泌機序を明らかにする目的で行った。 本年度は、ヒト歯髄の培養および神経伝達ペプタイドの放出の為の実験系の確立をめざした。智歯あるいは矯正による便宜抜去歯を患者の了解のもとに使用した。抜去後直ちに歯髄を摘出し冷たいクレブス液のなかで余分な組織を除去した。その後酸素化したクレブス液の中に浸し、37°Cのウォタ-バスに30分間培養した後に実験を開始した。2mlのクレブス液に摘出歯髄を10分間培養しコントロールとした。その後知覚神経を選択的に刺激するカブサイシン10_<-5>Mを混合したクレブス液中で10分間培養した。培養液に放出されたペプタイドを検出するために、直ちに酢酸を投与し撹拌器で撹拌した後、凍結させた。凍結させた試料を逸沈乾燥した後に、凍結保存した。RIA法による神経伝達ペプタイドのSPおよびCGRP濃度の測定は、次年度に行う予定である。
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