研究概要 |
生体内における生理的機能の制御には、蛋白質のリン酸化・脱リン酸化が関与している。本研究では脱リン酸化酵素であるプロテイン・ホスファターゼ(PP)について、消化管粘膜(口腔と大腸)の基底細胞での局在様式、および食品中に含まれる発がん物質(PhIP)により誘導される細胞増殖でのPPの発現変化を検索する。実験には、各種PP(PP1α,1γ1,1γ2,1δ,2A)、および新しくクローニングされたPP5(H),PPV(0)に対する特異的抗体を用いて、免疫組織学的手法とウエスタンブロット法により解析する。さらに口腔癌と大腸癌における各PPの発現異常の有無、および細胞内局在を明らかにし、PPの発現様式の変化と癌化との関連について検討する。 平成7年度においては、当初の計画どおりPP5,PPVに対する抗体が得られた。PP5のN端側には、蛋白-蛋白相互作用に関与すると考えられているTPR(tetratricopeptide repeat)が3個含まれるが、不溶性のため抗体生成にはN端側の2個を除去したcDNAを用い、GST(glutathione S-transferase)との融合蛋白質として大腸菌に発現させた。得られた可溶性蛋白質をGSTカラムにて精製し、これを抗原としてウサギに免役した。 PPVに関してはMBP(maltose binding protein)との融合蛋白質として大腸菌に発現させ、同様にウサギに免役した。血清より得られた各々の抗体のPP5,PPVに対する特異性については、GST-PP5,MBP-PPV融合蛋白質を用いたウエスタンブロット法で確認し、さらにGST,MBPを切り離したPP5,PPV単独の蛋白質に対しても、同様に特異性を確認できた。
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