研究概要 |
細胞周期のG1期からS期への移行には、retinoblastoma蛋白(pRb)のリン酸化が必須である。一方、ヒト正常上皮由来細胞株であるHaCaTは、transforming growth factor(TGF)-βで処理した場合、pRbは脱リン酸化状態にあり、G1期にて増殖停止する。また、脱リン酸化酵素であるプロテインホスファターゼ(PP)についてもPP2A,PP1の活性化がG2/M期,G1/S期の移行に必須であることが知られている。 本研究においては、G1期でのpRbの脱リン酸化がPPにより制御されているかについて、HaCaTにおけるPPの細胞内局在の解析、および口腔癌細胞での局在様式の変化の検索を行った。 ヒト口腔癌由来細胞株には、HSC4,HSC3,HOC313を用いた。HSC4はTGF-β処理時に、HaCaT同様G1期停止を引き起こし、pRbの脱リン酸化が生じるが、HSC3およびHOC313ではG1期にて停止せず、pRbはリン酸化されている。 2ng/mlのTGF-β処理した24時間後に、各細胞の蛋白を抽出して核と細胞質に分画し、PPの各種アイソタイプに対する特異的抗体を用いてウェスタンブロットを行った。その結果HSC3,HOC313,HSC4およびHaCaTにおける、PP1γ1蛋白の核内発現レベルは1:1:1:4であった。TGF-β処理時にはHSC3,HOC313では1:1のままであったが、HSC4,HaCaTでは0:1に低下していた。 一方PP1α蛋白では、1:1:0:2であった。TGF-β処理時にはHSC3,HOC313,HSC4では1:1:0のままであったが、HaCaTでは1に低下していた。 以上の結果より、pRbのリン酸化状態の変化とPP1γ1蛋白およびのPP1γ1核内レベルは、逆相関になっていることが明らかになった。
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