研究概要 |
1.研究に適したラット顎裂モデルを作製するために,片側の小臼歯を抜歯後種々の顎骨欠損を作製した.様々な小器具により,口腔内からのアプローチは可能であったが,顎骨がきわめて小さいことから,再現性のある手術を行うことは非常に困難であった.また,欠損がきわめて小さくなることから生体膜を応用しない対照群でも骨の再生が起こること,隣在歯への障害を避けられないことが明らかになった.今年度他施設において家兎に対し規格的に顎裂作製する方法が報告されており,顎裂部の保持のためにスペーサーを応用している.我々は現在,本研究においても家兎を利用することが有効であると考え,実験動物の変更を考慮している. 2.コルヒチン投与により,4日目からラット脛骨骨髄腔内に新生骨が出現しはじめる.したがって,それ以前に骨形成に重要な蛋白が骨髄組織において発現していると考えられる.そこで,コルヒチン投与後1〜4日目の各時期のラットの脛骨から全RNAを抽出し,differential display PCR法を用い,遺伝子発現のパターンをスクリーニングした.その結果,投与後1日目のサンプルにおいて特異的なバンドの発現が認められた.対照群とコルヒチン投与後1日群において差のある遺伝子を選択するために,5'プライマー5種類,3'プライマー4種類,計20種類の組み合わせにおいてdifferential display PCRを行ったところ,両者の遺伝子の発現パターンは非常に近似していたが、コルヒチン投与後1日目に明らかに特異的な発現を示すバンド2種類,投与後発現がきわめて増強するもの6種類,コルヒチン投与により発現が消失するもの14種類が認められた.現在,特異的な2種の遺伝子を再PCRにて増幅し,プローブとしてNorthern blot解析を行っている. 3.骨吸収を促進するプロスタグランジンの骨形成への関与について検討した.コルヒチン投与翌日から,内因性プロスタグランジンを抑制するインドメタシンを投与し,ラット脛骨骨髄腔内の新生骨形成を観察したところ,インドメタシン非投与群と比較し,新生骨形成が抑制されていた.したがって,インドメタシンが骨髄腔中の骨形成において促進的に関与している可能性が示唆された.
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