口蓋裂児と機能性構音障害児を対象として、音声ディジタルフィルタ【.encircled?.】R【.encircled?.】、音声ディジタルスペクトルエディタ【.encircled?.】R【.encircled?.】を用いて加工した母音と破裂音および摩擦音について弁別・同定実験を行った。その結果、フォルマントを加工した母音の同定実験と声門破裂音を模した音声の弁別実験では両群に差は認められなかった。また、摩擦子音の周波数分布を加工して次第に歪ませていくと、口蓋裂児では少ない歪み量で異常と判定していた。上記の実験手続きを構音障害治療前後で行った結果、母音の同定実験では両群とも構音治療前後での差は認められず、摩擦子音では機能性構音障害児では治療後に弁別が良好になって口蓋裂群との差は認められなくなっていた。鼻咽腔閉鎖機能と構音障害の種類により口蓋裂患児を分類して比較を行ったが、いずれにおいても差は認められなかった。 当科でHotz床併用二段階口蓋形成手術を行った唇顎口蓋裂児70例について臨床統計的な観察を行った結果、4歳頃までの早期の鼻咽腔閉鎖機能不全の程度によって発症する構音障害が相違しており、機能不全が比較的重度の場合には声門破裂音が、軽度の場合には口蓋化構音が発症していた。 以上から、機能性構音障害児では音声弁別能力が口蓋裂児に比し低下していると考えられたが、口蓋裂児における構音障害の発症要因としては音声弁別能力の低下という要因は少なく、鼻咽腔閉鎖機能不全の関与が大きいため、構音治療にあたってはいわゆる耳の訓練は重要ではないと考えられた。 口蓋裂例および機能性構音障害例にしばしばみられる側音化構音と鼻咽腔構音について臨床統計的分析を行った。その結果、従来は機能性構音障害と考えられている側音化構音例で器質性構音障害と考えるほうが適当と思われる症例が含まれていることが示唆された。口蓋裂例の鼻咽腔構音は鼻咽腔閉鎖機能不全が発症原因として最も有力であると考えられた。
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