研究課題/領域番号 |
07672164
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
外科系歯学
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中川 清昌 金沢大学, 医学部・歯科口腔外科学講座, 助教授 (30155676)
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研究分担者 |
岡部 孝一 金沢大学, 医学部・歯科口腔外科学講座, 講師 (70242518)
高塚 茂行 金沢大学, 医学部・歯科口腔外科学講座, 講師 (00251926)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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キーワード | 菌性感染症 / 相互作用 / マウス膿瘍モデル / 菌体外産生物質 / Streptococcus constellatus / Fusobacterium nucleatum |
研究概要 |
私は歯性感染症が発症、進展する上で、起炎菌どうしの相互作用が大きな役割を果たしているものと考え、研究を行った。基礎的研究を行うにあたり、まず臨床検体からの菌の分離状況に注目した。その結果、Streptococcus、Peptostreptococusといったグラム陽性球菌とPrevotella、Fusobacteriumといった嫌気性グラム陰性桿菌との組み合わせが、重症症励に多いことを見いだした。そこで特に分離頻度の多い通性嫌気性グラム陽性球菌であるStreptococcus constellatus、偏性嫌気性グラム陰性桿菌であるFusobacterium nucleatum、Prevotella intermediaに注目し、マウス膿瘍モデルを用いてこれらの菌の病原性の相乗効果について検討した。その結果、あらゆる組み合わせで、菌の病原性の相乗作用が認められた。次にこうした菌の相乗作用の機構の解明を目的に研究を行った。この研究には、S.constellatus、F.nucleatumを用いて、2菌間の病原性の相乗作用の機構についてin vivoにて実験を行った。その結果、F.nucleatumの耐熱性の菌体外産生物質がhostの免疫系に作用し、S.constellatusの病原性を増強していることが判明した。一方、S.constellatusは生菌で存在すればF.nucleatumの病原性を向上させるが、その菌体外産生物質はなんらこの相互作用に寄与しないことが判明した。私はこのS.constellatusの働きについて、酸化還元電位に注目した。すなわち、S.constellatusが局所の酸化還元電位を低下させることにより、他の嫌気性菌の発育を向上させるという仮説をたてた。そこで、S.constellatusとF.nucleatum、P.intermediaについてin vitroにて、菌数と酸化還元電位の変動について検討を行った。するとこれらの菌を単独で液体培地にて培養しても、培地の酸化還元電位は低下しないが、S.constellatusと他の嫌気性菌を混合して培養すると、培地の酸化還元電位は低下し、嫌気性菌は単独培養時よりも増加することが判明した。このことから、S.constellatusが生体においても嫌気性菌との共存下において、局所の酸化還元電位を下げ、嫌気性菌の増殖を促進し、このことが病原性の相乗作用の一因となっていることが示唆された。 こうした一連の研究から、菌性感染症の発症、憎悪の機構の一部が解明されたと考える。
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