現在、頭頸部領域悪性腫瘍では化学療法剤として白金化合物が最も多く使用されている。しかし腎毒性、胃腸障害、骨髄抑制等の重篤な副作用があり、これらが十分な臨床効果を得る上での障害となることがある。そこでわれわれは、臨床においてより有効な治療を行うことを目的にエ-リッヒ腹水癌細胞を用いて、抗癌剤と温熱との併用効果および薬剤の最適な投与時期について、また膜作用物質(アンホテリシンB、セファランチン、ベラパミル、ウアバイン、ジピリダモ-ル)が白金化合物(カルボプラチン、254-S)と温熱との併用に及ぼす影響について検索し、以下の結果を得た。 1.In vivoの系にて白金化合物は温熱により抗腫瘍効果増強を示した。 2.薬剤の投与時期は、温熱処置開始直前が最適な条件であること。 3.温熱による白金化合物の抗腫瘍効果増強の作用機序は、in vivoの系にて腫瘍組織内の薬剤濃度が上昇すること、in vitroの系では細胞内への薬剤の取り込みが増加すること。 4.カルボプラチンの場合、in vitroの系にてウアバインは白金の細胞内への取り込みの低下を示した。このことより、細胞内への白金の取り込み機構にNa^+-K^+ ATaseを介した能動輸送が関与する可能性が示唆された。 In vitroの系にて254-Sと温熱併用療法にジピリダモ-ルを加えることにより、抗腫瘍効果が増強した。また、細胞内白金の蓄積を増大させた。
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