研究概要 |
口腔扁平上皮癌のホルマリン固定パラフィン包理組織から、Goelzの方法によりDNAを抽出して癌関連遺伝子の増幅を検索し、各症例の転帰との相関性を検討することを目的として本研究を行っている。前年度に引き続き、DNA抽出および遺伝子増幅の検出へのホルマリン固定の影響を調べるため、口腔扁平上皮癌原発巣由来の樹立細胞系(MOK 101)をトリプシン溶液遊離後、遠心して細胞を集め、4℃、10%緩衝ホルマリン液にて1日、3日、7日間処理後またはホルマリン未処理にて、DNAを抽出・精製(和光純薬、DNA抽出キット)し、アガロースゲル泳動にてDNAの変性(低分子化)の有無を観察したところ、この条件であればホルマリン処理後でもDNA低分子化はごく軽度で、DNA低分子化の著しい室温処理に比べて良好な結果であった。さらにMOK 101ヌードマウス同所移植腫瘍のホルマリン固定パラフィン包理材料(臨床材料と同様の室温ホルマリン固定)から厚さ20μmの薄切切片5枚、15枚。30枚を作製し、Goelzの方法によりDNAを抽出したところ、切片5枚からでも十分量のDNAが得られることを確認した。しかし、本移植腫瘍材料は室温ホルマリン固定されているため、DNA低分子化が認められた。続いて、上記の培養細胞pelletおよびヌードマウス移植腫瘍組織における癌関連遺伝子(EGFR,Met)の増幅を、Southern blot 法にて検索したところ、細胞pellet(ホルマリン未処理)ではこれらの遺伝子の増幅を認めた。さらに、dot blot法により増幅コピー数を定量中である。今後はヌードマウス移植腫瘍組織からの抽出DNAを用いて、各遺伝子増幅をdot blot法によって検索するとともに、臨床材料からのDNA抽出、dot blot法による遺伝子増幅の検出を行い、臨床転帰との相関性を検討する。
|