口腔癌各症例の初診時の臨床病理学的各種所見から臨床病理学的悪性度(悪性度)を評価し、その悪性度に応じたinduction chemotherapy後に、悪性度と化学療法効果に基づいて手術法を決定する体系的治療法を各症例に実施した。これら体系的治療を行い、術後6か月異常経過した87例について、術後の口腔機能や日常生活状況に関するアンケート調査(言語、経口摂取機能の自己評価を含む)と発語(日本語100音節発語明瞭度)および会話明瞭度検査を施行し、自己評価と客観的評価を比較検討した。さらにアンケートの解答結果を点数評価して″満足度″を算出した。その結果 (1)言語機能の自己評価では、excellentは83.9%であり、良好な結果であった。 (2)言語機能の客観的評価では、口底癌のT3、T4症例に機能低下が認められた。 (3)普通食を30分以内に摂取可能な症例は47.1%、経管摂取を行っている症例は2.3%であった。 (4)食生活に関する自己評価では、満足が67.8%であり、大いに不満は14.9%であった。 (5)総合評価としての満足度は、excellentが54%、moderate40.2%、不満のpoorは5.8%であった。 すなわち、悪性度や化学療法効果に基づいて手術法を決定する体系的治療は、成績の向上のみならず、術後のQOLの向上にも寄与している可能性が示唆された。さらに症例を重ね、よりよい術後のQOLを考慮した手術法について引き続き検討する予定である。
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