研究概要 |
選択的鎮静薬や選択的不安薬を,単独あるいは併用投与することにより,Benzodiazepine(BZP)誘導体に代わる静脈内鎮静法が可能か否かを中枢神経系作用発現機構から微小透析法で検討した. 当該年度は,雄性SD系ラットを用い,BZP受容体が高密度に存在する脳部位である扁桃体基底外側核,大脳皮質内側前頭前野,側坐核,青斑核,腹側被蓋野に微小透析プローブを稙入し,稙入24時間以降に,人工脳脊髄液の灌流を開始して,回収した灌流液全量を20分間隔で,高速液体クロマトグラフィー・電気化学検出器に注入し,注入サンプル中のノルアドレナリン,ドーパミン,セロトニンならびにその代謝産物量を高速液体クロマトグラフィー・電気化学検出器で計測した.その結果,1.選択的鎮静薬zolpidem投与により,青斑核のノルアドレナリン,腹側被蓋野のドーパミン細胞外量減少する.2.選択的抗不安薬Y-23684投与により,扁桃体基底外側核と大脳皮質内側前頭前野のセロトニン細胞外量が減少する.3.ミダゾラム投与により,青斑核のノルアドレナリン,腹側被蓋野のドーパミン,扁桃体基底外側核と大脳皮質内側前頭前野のセロトニン細胞外量が減少する.以上の研究結果を得た.すなわち,Benzodiazepine誘導体ミダゾラムは,脳内の広範囲な部位で,ノルアドレナリン,セロトニン,ドーパミンなどのモノアミンニューロン活動を抑制し,選択的鎮静薬zolpidemや選択的抗不安薬Y-23684は,限局した脳部位で,モノアミンニューロン活動を抑制することが示唆された.以上から,選択的鎮静薬や選択的抗不安薬の中枢神経系作用発現機構として,特定脳部位でのモノアミンミューロン活動の抑制が明確となり,選択的鎮静薬と選択的抗不安薬を単独あるいは併用投与することによって,静脈内鎮静法が可能性なことが中枢神経系作用発現機構から示唆された.
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