音声言語は聴覚のみならず口腔内表面知覚および構音器官深部感覚などの感覚情報と構音運動との間のfeed back systemにより自己調整されており、これらの一部に異常をきたした場合、構音障害が生ずるといわれている。したがって口蓋裂患者の口蓋表面知覚異常は構音運動および正常言語獲得に何らかの影響を及ぼしうることが考えられる。そこで術後口蓋裂患者の口蓋表面知覚、とくに振動覚を客観的に測定し、その値を正常人と比較検討することから始めた。 口蓋粘膜の表面知覚の測定部位は正中硬口蓋前方部、健側と患側の小臼歯部、軟口蓋正中部であり、まずテクノローブ社製振動覚計を用いて、おのおの3回測定した。なお、測定は口腔内であることから口蓋の表面知覚測定が容易にできるように、振動覚計のプローブを特注して先端プローブの大きさが従来より小さいものに、また端子を長いものに変更したものを、さらに振動覚値の時間的誤差を少なくする目的で、患者が振動の感覚を認識できると同時に患者にレバ-を押させて値を止めることができるように特注して使用した。表面知覚測定の他に聴覚的開鼻声度、会話明瞭度、異常構音のチェックも同時に行った。これらの測定ならびに調査を、Perko法による二段階口蓋形成術施行患児のグループ、Perko法以外の方法で口蓋裂手術を行った術後口蓋裂のグループ、咽頭弁移植術を適応となった鼻咽腔閉鎖不全の認められるグループなどで行い、データ求めるとともに、ほぼ年齢の近い正常人のデータを求め比較検討した。 その結果、正常人よりPerko方施行患児で、また口蓋裂患者では健側より患側で、大きな値を示す傾向が認められた。今後は、さらにデータ数を増やすとともに、詳細な検討をしていく所存である。
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