研究概要 |
兎の口腔内電気刺激によって血圧は初期の血圧低下とその後に続く血圧上昇との2相性の反応を示す.平成7年度はまずこの血圧低下反応について詳しく検討した. 血圧低下反応は電気刺激の刺激頻度が低いほど明確に出現し,10Hz以下では血圧上昇反応を伴わないものも多い.これはtrigeminal depressor response (TDR ; Kumada M et al, 1977)として知られている.そこで,TDRが大脳皮質組織血流量と酸素分圧に及ぼす影響を観察し,併せてTDRによる循環変化に対する笑気吸入とエピネフリン持続静注の影響について検討した.その結果,TDRによる大脳皮質組織血流量と酸素分圧の減少は,血圧低下の程度が同程度であれば,迷走神経刺激時の変化とまったく同様であった.また笑気はTDRによる血圧低下を抑制し,エピネフリンは増強した.以上の知見について,第23回日本歯科麻酔学会総会(広島),第43回日本麻酔学会(岡山)および70th International Anesthesia Research Society Meeting (Washington DC)において発表した. 次に口腔内電気刺激による血圧低下および血圧上昇反応に対する笑気とイソフルランの効果について検討した.笑気は血圧低下反応を抑制する一方で,血圧上昇反応を増強することがあり,今後の検討課題である.イソフルランは血圧低下反応も血圧上昇反応も濃度依存性に抑制するが,1.5MACでも,あるいは更に笑気を加えてもこれらの反応は消失しないことが多く,吸入麻酔のみで口腔領域の侵害刺激に対する循環反応を完全に抑制することは不可能であった.
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