New Zealand white種(NZW)体重2.5〜3.0kgの成熟ウサギ、雄性を用い、佐藤-Heimdahl法に準じて、NZW種ウサギの実験的下顎骨感染モデルを作製し、顎骨感染モデルの好中球機能におよぼす化学療法剤の影響を検討した。接種菌として、Streptococcus milleriとBacteroides fragilisの2菌種を用いて菌接種群とし、比較としてコントロール群を下顎骨感染モデル作製時に菌を接種させずに、外科的侵襲のみを加えたものを使用した。観察時期は、菌接種後3日後・7日後・3週間後・8週間後・12週間後とし経時的に採血し、好中球を分離してこれの遊走能について測定した。遊走能の測定は、走化性因子としてN-formyl-methionyl-leucyl-phenylalanine(FMLP)を用いて、使用時にHanks balanced salt solution(HBSS)にて濃度調整した。対照としてRPMI 1640を用いた。96穴ケモタキシスチャンバーを用いて、一定数に調整した好中球浮遊液と、1・10・100μg/mlの各種濃度に調整した抗菌薬とを混和し、一定条件下で培養した。抗菌薬としては日常臨床の場で多用されている系統の異なる3種の抗菌薬、すなわち細菌の細胞壁合成阻害剤であるセフェム系の抗菌薬、細菌の蛋白合成阻害剤であるマクロライド系の抗菌薬、DNAの合成阻害剤であるニューキノロン系の抗菌薬を用いた。培養後、チャンバーから取り出したフィルターに付着する遊走細胞を固定後、染色し、乾燥後、マイクロプレートリーダーにて吸光度を測定し、それぞれの条件を比較検討した。抗菌薬によっては高濃度になると菌接種群、コントロール群とも機能の抑制がみられることもあるが、臨床上で使用する濃度では問題とならないことが示唆された。
|