自己免疫疾患にともなう口腔乾燥症を検討するため、インシュリン依存性糖尿病の実験動物モデルであるNODマウスを用い唾液腺機能を検索した。本研究ではムスカリン受容体刺激の耳下腺と顎下腺の反応を、NODマウスを糖尿病発症群と非発症群とに分け、Balb/cマウスをコントロールとして検討し、以下の結果を得た。 ピロカルピン刺激による全唾液の分泌量は糖尿病マウスで有意に低下した。その唾液蛋白濃度はNODマウスで低濃度であり、アミラーゼ活性も低値であった。ムスカリン受容体は、耳下腺では糖尿病発症にともないレセプター濃度が減少し、顎下腺ではNODマウスの糖尿病発症、非発症ともBalb/cに比較して減少していた。cAMP濃度は、無刺激時にはNODマウスもBalb/cと同程度であった。ピロカルピン刺激によりすべての群でcAMP濃度は上昇したが、その上昇度はBalb/cに比較するとNODマウスでは耳下腺、顎下腺ともに低かった。イノシトールリン脂質代謝は、顎下腺においてはカルバコール刺激によりBalb/cではその代謝回転を上昇させたが、NODマウスでは上昇させなかった。一方、耳下腺においてはNODマウスはカルバコール刺激時、非刺激時ともBalb/cに比較して高値であった。動物の血清と放射線標識されたムスカリンレセプターとの沈降反応は、NODマウスの血清の沈降度が高く、自己抗体の存在が示唆された。 以上のような結果から、NODマウスでは唾液腺機能が低下しており、その原因の少なくともひとつは、細胞表面の蛋白に対する自己抗体の形成によることが示唆された。
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