平成7年度研究では、NODマウスは唾液腺機能低下を認め、この唾液腺機能障害は自己免疫病理によることが示唆された。平成8年度研究では唾液細胞が産生する成長因子のうちInsulin-like Growth Factorr(IGF)について以下のことを検討した。 1.IGF-binding proteinの検討 (1)唾液腺組織におけるIGF-binding proteinの免疫組織化学による局在の検討 (2)血液、唾液、唾液腺組織中のIGF-binding proteinとIGFの結合に関する検討 ^<125>I-IGFを用いたradio-ligand assay (3)Western blotting 2.IGFの胃内投与による全身組織への分布の検討 (1)^<125>I-IGF投与後、血液および各臓器の放射活性を測定 (2)ホモジナイズした臓器をカラムクロマトグラフィで分離しIGFの活性を確認 その結果、Balb/cとNODマウスの血清中には25kDaから45kDaのIGF binding proteinを検出し、そのうちのひとつはWestern blottingでIGFBP-2であることを確認した。糖尿病を発症したNODマウスの血清IGFBPは量が増えていた。一方、唾液中ならびに唾液組織中にはIGFBPは認めなかった。投与した^<125>I-IGFは血清中には糖尿病発症NODがBalb/cより高値であったが、各臓器の濃度は腎を除いてBalb/cの方が高かった。各臓器から回収されたIGFは培養細胞を増殖させ、活性が保たれていることを確認した。 以上のことから、唾液から産生されるIGFは、唾液のIGFBPの存在なしに胃から吸収され各組織に分布することが示唆された。また、糖尿病での創傷治癒遅延は各組織のIGF濃度の分布の低下が関係している可能性が示唆された。
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