平成7年度研究では、NODマウスは唾液腺機能低下を認め、この唾液腺機能障害は自己免疫病理によることが示唆された。平成8年度研究では唾液細胞が生産する成長因子のうちInsulin-like Growth Factorr(IGF)について検討した。平成9年度は以前よりおこなっていたニューロペプチドに関する検討の取りまとめで、NODマウス唾液腺が神経伝達物質に対する唾液腺細胞の反応低下が起こっているかどうかを検討した.substance P(SP)、vasoactive Intestlnal polypeptide(VIP)、neuropeptido Y(NPY)などのニューロペプタイドをピロカルピンとともに投与し、唾液分泌量、蛋白濃度を検討した.また、唾液腺組織中のニューロペプタイド量を測定した. 1)唾液分泌量 Balb/cではSP、VIP、NPYともピロカルピン単独より分泌量を増加させた.NODマウスではピロカルビン単独と同程度であり、増強効果がなかった. 2)唾液蛋白濃度 Balb/cではSP、VIP、NPYともピロカルピン単独より蛋白濃度を増加させた.NODマウスの糖尿病非発症群ではVIP、NPYが少量の増加傾向を示した. 3)唾液腺組織中のニューロペプタイド濃度 SPは耳下腺、顎下腺とも糖尿病発症に従い濃度が低下した.NPYはNODマウスの糖尿病非発症群で上昇していた以外は変化がなかった.VIPはNODマウスの糖尿病非発症群の耳下腺組織で上昇していたが、顎下腺で下降しており、糖尿病発症群でも低値であった. 4)SPの唾液腺における免疫組織化学的検討 SPは糖尿病発症のNODマウスで染色が低下していた. 以上の結果は、NODマウスの唾液分泌機能の低下は唾液腺の神経刺激全般に対する細胞応答低下に起因するものであることを示唆していた.
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