研究概要 |
初診時,手術前,手術後,保定観察期の顎変形症患者30名のデータを採取した。 顔面が対称性であるか非対称性であるかによって、描画結果に特徴が認められたので、一般性のある検査法を確立できる見通しが得られた。 その結果、手術前の描画では自己の顔が画面の大きさに比較して小さく、色づけすることも少なかった。その表情は暗く自身のなさが描かれていた。 手術後の描画では、下顎の前突や顔面の非対称性といった手術前の特徴を的確に指摘していた。さらに手術で変更された部位を正確に描画し治療効果を的確に指摘していた。手術後の自己顔は、画面に比較して大きく、色づけがなされ、女性らしさを強調する患者の態度が観察できた。治療前に変位していた頭位が、手術後に正しく水平に直立した頭位になってたと治療効果として、頭位の変化を描画した患者もいた。手術後数年経過していても、手術前の顔の特徴を正確に描画していたことから、手術前の自己顔像を記憶していることが分かった。また、数名の役割構成レパートリーテストでは、必ずしも手術によって理想の自己顔像を得ているとは言い難かった。治療結果に対する自己の評価は、家族や友人といった身近な人からの指摘に強く影響されている可能性が見受けられた。 顎変形症患者が、口唇周囲の形態異常によって自己顔像にまで歪みをもっていることが推定されたので、外科的矯正治療の治療成績については、自己顔の変化の面から心理学的に深く検討する必要が強く示唆された。
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