平成7-8年度では、顎変形症患者の内面世界を知るための自己顔描画テストの基礎的問題について検討した。【対象および方法】骨格性下顎前突症のため下顎枝矢状分割法、もしくは上下顎同時移動術の適用前後の女性50名を対象とした。描画課題は、手術前の患者では最初に現在の自己顔像、次に現在の側面あるいは正面、最後に手術後の顔の順に、手術後の患者では最初に手術後の自己顔像、次に手術後の側面あるいは正面、最後に手術前の特徴を表す顔の順にそれぞれ3枚の描画を指示した。各描画に際しては、患者に以下の教示を行った。一枚目:今の顔を描いてください。二枚目:今の横顔(もしくは前から見た顔)を描いてください。三枚目:手術前の自分の顔で、最も特徴的な顔を描いてください。【結果および考察】前提条件として、自己顔像は自己像を表すと考えられる。作業仮説として、1.被験者の最も重要と思われる特徴が描かれる、2.部分は基本的な被験者の認識や関心を表現する、3.ほとんどの被験者は用紙の中央に描くと考えた。1.被験者の最も重要と思われる特徴が描かれる。2.部分は、基本的な被験者の認識や関心を表現する。3.ほとんどの被験者は、用紙の中央に描く。手術の患者は、描画に対して消極的な態度が見られたが、手術後には積極的であり協力的であった。部分を細かに描画したり極端に強調するといった病的な描画が観察された。自己顔イメージに歪みをもち自己の顔を仮面化している患者が観察された。患者は、顔の輪郭を重視していたことから、手術による輪郭の変化を事前に説明する必要があると思われた。【結論】自己顔描画テストは、手術前後の顎変形症患者の自己イメージを観察するための技法として、有意性があり妥当性をもつものと推察された。
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