研究概要 |
口腔内由来の病原体による歯科医療従事者への飛沫感染の可能性を検討す目的で、口腔内レンサ球菌を環境モニタリングの指標として用い、実際の臨床の場で歯の切削時とスケーリング時に伴い発生するエアロゾルが歯科医師(術者)ならびに歯科衛生士(介助者)にどの程度曝露するのかを明らかにし、実践的な感染対策として、感染予防と空気清浄器の機能を兼ね備えたバキューム装置を実際に使用し、その効果についても検討した。歯の切削ではスケーリング時より口腔内レンサ球菌の飛散が多く,また粒子径は0.65〜2.1μmの範囲に多く分布し、比較的小さいエアロゾルであった。さらに口腔外バキューム装置の有無による効果を比較すると、使用した場合は90%以上の除去効果を認めた。また術者および介助者への曝露量を部位別に検討した結果、術者ではスケーリング時はメガネに有意に高く,歯牙切削時ではマスクに多く付着した。介助者では歯牙切削作業の場合、術者と同程度であるが、スケーリング作業の場合、曝露量は少なかった。以上のことから、口腔内レンサ球菌が診療室内気中に存在することが容易に確認することができ、また歯の切削およびスケーリング時に多くの口腔内レンサ球菌が飛散し,しかも歯科医師の顔面に飛散することは明らかで,感染性の疾患を持つ患者を診療する場合は飛沫感染の可能性は高いことが示唆された。したがって,口腔内レンサ球菌を歯科診療室における感染性環境汚染のモニターとして有用であることが明らかとなり、次年度の研究では、開業医院における作業環境状況を本法を用い把握し、歯科医院における感染性エアロゾルによる室内環境汚染と術者及び介助者への感染の可能性について検討する。すべてのデータから、歯科診療室の環境汚染に関する基準を提案する予定である。
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