研究概要 |
本研究はビタミンAの誘導体のRA(all-trans retinoic acid: at-RAと9-cis retinoic acid: 9-cis RA)とビタミンD_3(D_3)がHPLF-YとHPLFの細胞増殖と分化に対してどの様な基本的な調節を行っているのか検索したものである。 細胞は,2×10^4cells/cm^2の細胞密度で播種し,培地中に,at-RAと9-cis RAおよび活性型vitamin D_3を単独あるいは同時に添加し,細胞増殖および分化の指標として各々,DNA量,^3H-thymidine(^3H-TdR)取り込み量,alkaline phosphatase(ALPase)活性,^<35>S-methionine(^<35>S-Met)取り込み量を測定した。さらにイオン交換クロマトグラフィーにより素通り分画,0.1M NaCl溶出分画,0.2M NaCl溶出分画の3分画に分けた。その結果,以下の点について新しい知見が得られた。 1.HPLF-Yにおける容量依存的な応答があり,その最大応答濃度はat-RA 10nM, 9-cis RA lnMであった。 2.D_3との相互作用では,培養9日目における増殖の抑制とALPase活性の上昇に関しては,HPLF-Y, HPLFともに,D_3の同時添加による相加的な効果が認められた。 3.増殖期における10nM at-RA, lnM 9-cis RA とD_3の添加後の^3H-TdRのDNAへの取り込み測定で,HPLF-Yはat-RA, 9-cis RAによる抑制は認められなかったが,4日間これらリガンドの添加後の測定ではHPLFとともにat-RA, 9-cis RAによる抑制が認められた。 4.タンパク質の合成は,^<35>S-Metの高分子分画への取り込みからみると,HPLF-Y, HPLFともにat-RA, 9-cis RAは同じ総放射活性であり,D_3を添加しても変化はなかった。しかし,イオン交換クロマトグラフィーにより素通り分画,0.1M NaCl溶出分画,0.2M NaCl溶出分画の3分画に分けたところ,controlにおいてHPLF-Y, HPLFともに同じパターンを示したが,D_3と9-cis RAによって^<35>S-Met標識タンパク質が異なる分布を示した。すなわち,HPLF-YとHPLFにD_3と9-cis RAによって,特徴的なタンパク質の発現調節がなされている可能性が示唆された。
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