研究概要 |
咬合誘導上の理由で抜去した乳歯と永久歯の歯根膜より遊走した細胞をそれぞれ,HPLF-YとHPLFとして継代培養した.2×10^4cells/cm^2の細胞密度で播種し,レチノイン酸(all-trans retinoic acid:at-RAと9-cis retinoic acd:9-cis RA)のHPLF-YとHPLFの増殖と分化に対する容量依存的な応答を検索するために,それぞれ,0.01nM〜100nMの濃度範囲で単独,あるいは0.5nMビタミンD_3(D_3)とともに添加した.その結果,細胞当たりのALPase活性は,HPLF-Yでat-RA:10nM,9-cis RA:1nM,HPLFでat-RAと9-cis RAともに1nMで最大の上昇を示した.次に,DNA合成およびタンパク質の合成は10nM at-RA,1nM 9-cis RA,0.5nM D_3,10nM at-RA+0.5nM D_3と1nM at-RA+0.5nM D_3を添加した結果,特に9日目において,両細胞で増殖の抑制とALPase活性の促進が認められ,さらにRAとD_3による相加的な効果が認められた.増殖に対する効果は,^3H-TdRの取り込みにより,両細胞で,at-RAと9-cis RAによる抑制は全く認められなかった.ところが4日間,これらのリガンドを添加してから^3H-TdRのDNAへの取り込みをみると,HPLF-YとHPLF共にat-RAと9-cis RAによる増殖の抑制が認められた.一方,タンパク質の合成は^<35>S-Metの高分子分画への取り込みから,HPLF-YとHPLFにおいて共に,at-RAと9-cis RAは同様の放射活性を示したが,D_3を添加しても変化はなかった.培地中のタンパク質はイオン交換クロマトグラフィーにより素通り分画,0.1M NaCl溶出分画,0.2M NaCl溶出分画の3分画に分けられた.controlにおいてHPLF-YとHPLFともに同様のパターンを示したが,D_3と9-cis RAによって^<35>S-Met標識タンパク質が異なる分布を示した.すなわち,核内受容体のRXRとVDRとのクロストークと各タンパク質の応答配列の重要性が示唆された.したがって,本研究においてヒト乳歯歯根膜由来の培養線維芽細胞は細胞の分化度が低く,増殖が活発であり,ヒト永久歯歯根膜由来細胞は細胞の分化度が高いことが示唆された.
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