平成7年度の研究計画に基づき、主にプール歯垢と本研究で考案した装置で採取した歯垢を材料に、歯垢の採取、歯垢試料の切片作製と面積測定、試料分画のフッ素濃度の測定という3つの観点から実験方法を検討し、歯垢中のフッ素濃度分布の測定方法の開発を行った。主な研究実績としては、 1.歯垢からのフッ素の抽出方法についてはこれまで特に定説はないが、低〜室温下での0.5M過塩素酸が多用されている。本測定法ではフッ素の抽出方法に0.2M過塩素酸を含む酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)を使用するため、歯垢試料から分離されるフッ素量を両者で比較したところ、この緩衝液の方が僅かではあるが有意に多くのフッ素が分離できた。 2.本測定法では、methacrylateで包埋後切片化した歯垢を層別試料に分け、クロロホルムを用いてmethacrylateを溶解することで試料分画からフッ素を回収する。既知量のフッ素を添加した歯垢を用いた場合の回収率は約95%で、この方法が歯垢中のフッ素濃度分布の測定に利用可能なことが確認できた。 3.本研究で考案した歯垢採取装置を利用して、in vinoのエナメル質上に厚さ約1mmの堆積物を集めることができた。歯垢に含まれるフッ素濃度は一般に極めて低いので、フッ素電極の感度限界から判断して、その1試料から分析できる歯垢分画数は4〜6層と考えられた。 4.また、本測定法の結果は、歯垢の断面積と切片の厚さから算出した歯垢体積あたりのフッ素量として求められる。トルイジンブルー染色した切片を使って、その歯垢面積を画像解析装置で反復計測したところ、その再現性はC. V.で1%以下で安定していた。 従って、以上の結果を統合することにより、測定方法の確立という当初の計画を達成することができた。
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