平成7年度は象牙質コラーゲンの強化と象牙質齲蝕の進行との関連性を検討する前段階として各種コラーゲン強化剤の効果について検討をおこなった。詳細は以下の通りである。 【材料および方法】コラーゲン試料は、厚さ50μmの薄膜(新田ゼラチン)を用いた。コラーゲン強化のための作用液は、0.5%タンニン酸(TA)を含むリン酸緩衝液および1%グルタールアルデヒド(GA)を含む同液の2種類とし、作用時間はいずれも24時間とした。また、紫外線(UV)の照射は、日野らの方法に準じておこない、照射時間は5時間とした。強化後のコラーゲン薄膜の抗酵素性、膨潤性および機械的強度を測定した。抗酵素性は、試料を100unitのコラゲナーゼロリン(HP)量を測定し、評価した。機械的強度評価のためにJIS規格の定める引張試験用4号形に基づき切り出した薄膜を強化後、引張試験を行い(オートグラフ、AG5000B、島津)、引張破壊強さ、引張破壊伸びおよび引張弾性率を求めた。 【結果】対照の試料は、30分の作用で大部分が溶解したが、実験群は、いずれも溶解が遅延した。6時間目でも、TA群では対照の10%、GA群では同38%の溶出であった。実験群の吸水量は、対照群よりいずれも少なく、UV群で対照群の21.7%、TA群では25.0%およびGA群では29.8%であった。引張破壊強さは、TA群は47.5MPaで最も大きく、ついで対照群は42.7MPa、GA群は42.2MPaで、UV群は28.6MPaで最も小さかった。引張破壊伸びは、対照群が6.07%で最も大きく、ついでTA、GA、UV群の順で、最も小さいUV群は2.78%であった。引張弾性率は、GA群が1.88GPaで最も大きく、ついでTA、UV、対照群の順で、最も小さい対照群は1.14GPaであった。
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