研究概要 |
マイクロファージの産生する一酸化窒素(NO)は、外来微生物や癌細胞を障害するなどの生体防御の役割を担う一方で、肝炎やリウマチなどの炎症を悪化させる。したがって、マイクロファージのNO産生量を増強させる物質は抗腫瘍薬としての可能性が、NO産生量を抑制する物質は抗炎症薬としての可能性が考えられる。今回、数種の植物について、マウス復腔マクロファージのNO産生に影響を及びぼす成分の検索を行い、次のような結果を得た。 1)メグスリノキ(Acer nikoense)のメタノールエキスを分画したAcOEt可溶画分はマイクロファージのNO産生を抑制し、その活性本体は(+)-rhododendrolであった。一方、n-BuOH可溶画分はNO産生を増強し、その活性本体は高極性のポリフェノール類と推定された。また、n-BuOH可溶画分から得られたepi-rhododendrinはNO産生を抑制した。 2)クガイソウ(Veronicastrum sibiricum L)のメタノールエキスはマクロファージのNO産生を強く増強し、この活性はAcOEt可溶画分に移行した。AcOEt可溶画分からはNO産生増強効果を有するpicroside Iを単離、同定するとともに、活性をもたない新規成分である6-(3,4-dimethoxycinnamoyl) ajugolを単離した。n-BuOH可溶画分はNO産生を抑制した。 3)コウモリカズラ(Menispermum dauricum)およびオオヅラフジ(Sinomenium acutum)のメタノールエキスはマクロファージのNO産生を抑制し、それぞれの活性成分としてdauricineおよびsinomenineが単離された。 4)日本冬虫夏草の一種、ハナサナギタケ(Isaria japonica)の培養液は、免疫作用を増強するとともに、抗癌剤、5-FUの副作用である免疫機能低下を抑制した。
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