1.電子供与性あるいは電子吸引性の置換基を導入したあり-ルセレノキシド誘導体に、広く応用可能な合成法を確立した。 2.上記で合成した光学活性γ-ヒドロキシセレノキシドを用いて、不斉プロトン化反応を行なったところ、電子供与性の置換基を導入したアリール誘導体でeeの向上が見られた。 3.不斉プロトン化反応のエナンチオ面選択性に対する反応温度や溶媒、エノレートの金属など反応条件を検討し、至適条件をほぼ確立した。臭化亜鉛エノレートを基質とし、 (S_<se>)-セレノキシド(Ar=p-MeOC_6H_4)をキラルプロトン源として用いた場合に、89%eeという高いエナンチオ面選択性を達成した。キラルプロトン源は、定量的に回収された。 4.(R_<Se>)-と(S_<Se>)-セレノキシド(Ar=p-MeOC_6H_4)を不斉プロトン源として用いたところ、予期に反して、いずれも(S)-2-ベンジルシクロヘキサノンが、エナンチオ選択的に得られた。このことより、セレン原子のキラリティーとボルニル基の両方が不斉誘起に関与していると推察される。 5.相当する光学活性γ-ヒドロキシセレニドをプロトン化反応に用いても、不斉誘起がほとんど見られなかったことから、セレノキシドのセレニニル酸素と水酸基間の分子内水素結合が、本反応のエナンチオ面選択性発現に寄与していると考えられる。 申請者らが現在までに達成したeeおよび化学収率は、実用的には十分満足できるものであり、単離した光学活性セレノキシドを不斉反応に初めて活用した意義は大きい。
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