研究概要 |
M細胞はラット肝細胞より樹立された細胞株である。本細胞の特徴はビタミンCを添加して培養を継続すると,その分化機能であるコラーゲン線維を形成する事である。コラーゲン線維は細胞間隙を埋め、成体構成組織の補強や、癌の転移がコラーゲン層を浸潤する事により成立するなど多彩な生物機能を有している。肝臓において過度のコラーゲン蛋白質の生成は肝の萎縮、肝硬変への移行がおこり、傷創治癒に際しては速やかな生成が望まれる。本研究はこの様に多彩な機能を有するコラーゲンに注目して、その生成に機能する物質の天然よりの単離を目的とした。 第一段階として細胞培養条件の検討と、幾つかの植物抽出祖エキスのスクリーニングを行った。指標としてビタミンC添加群をコントロールとして用い、コラーゲン線維の生成度合いを光学顕微鏡下観察した。その結果幾つかの植物エキスにコラーゲン線維合成抑制活性を認め、そのうちの沖縄県で採集した、クラツヅラ科植物Premna subscandans(ヤエヤマハマクサギ)及びウリノキ科植物に顕著な活性が認められた。まずヤエヤマハマクサギに注目して、そのメタノールエキスから各種クロマトグラフィーで精製を繰り返し、活性成分の単離を試みた。活性成分を薄層クロマトグラフィー上単一になるまで精製し、核磁気共鳴スペクトル、質量スペクトル等を用いて構造解析を行った。その結果本物質はフェニルエタノイド誘導体であるアクテオサイドであった。アクテオサイドはフェノール性の化合物であり、近年多くの薬理活性試験において活性を示す大変興味深い物質であった。今後更に構造活性相関、作用機作などの検討を行いたい。また同植物の成分検索も鋭意行ったので併せて報告する。
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