抗癌剤によるDNAの酸化的損傷の一つであるデオキシリボースC4'位酸化により生じる修飾DNAの反応性、特にアミン、金属イオンによる切断とその反応機構を検討するため、種々のヌクレオチド誘導体を合成し、反応性を検討することにより修飾DNAのアミンによる解裂の反応機構を提案した。1)修飾DNA、すなわちC4'酸化ヌクレオチド(1)の前駆体としてC4'位にフェニルセレニル基を導入したヌクレオシド誘導体(2)を合成し、その反応性を検討した。その結果NBSとの反応により2はC4'酸化ヌクレオチドを再生し、前駆体として適当であることが判明した。2)修飾DNAのアミンとの反応においてその分解過程で生じると考えられるヌクレオチド誘導体(3)を合成し、そのアミンとの反応を検討した。その結果、3はアミンと反応し、3'phosphate構造を有するヌクレオチド断片を遊離すると同時にラクタム体を生成をすることを見いだした。この反応は中性、弱酸性条件下でも進行し、ヌクレオチド断片、ラクタム体を高収率(〜80%)で与えた。この実験結果をもとに3とアミンとの反応によるヌクレオチド断片およびラクタム体の生成機構を示し、修飾DNAのアミンとの反応による解裂、ラクタム体生成の可能性を示唆した。3)C4'フェニルセレニルヌクレオチド誘導体(4)より調製したC4'酸化ヌクレオチド(1)とアミンとの反応を行い、ラクタム体が40%程度の収率で得られた。この結果から修飾DNAがアミンとの反応により、5員環アミンの生成、脱離反応を経てDNA鎖解裂、ラクタム体生成を起こす反応経路を提案した。
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