私達はこれまでに天然のまめ科植物を起源とする肝障害や癌に有効なトリテルペン配糖体、ならびに、なす科植物を起源とする抗腫瘍性ステロイド配糖体の研究を行ってきたが、いずれの配糖体においても、加水分解により糖鎖を除去しアグリコンのみにすると活性が低下もしくは消失する。さらに、糖鎖構造の違いによっても活性が異なることが明らかとなった。従って、糖鎖が重要な役割を持つことが示唆された。まめ科、および、なす科それぞれのオリゴ糖部の特徴としては、前者のトリテルペン配糖体はグルクロン酸を構成糖の一部にし、一方、後者のステロイド配糖体はラムノースを末端に有する。そこで、これら機能性のオリゴ糖部をそっくり切り取り、それを異なる非糖部のアグリコン、例えば、従来用いられている抗ガン剤等に貼り付け、ガン細胞認識選択性を高め、または副作用を減じる等の新しい機能を発現させようとするのが研究の焦点である。 まず本研究の基礎的実験として複雑な合歓皮(Albizzia julibrissin)のサポニン(Julibroside I)の化学構造を明らかにし、これが強力なトポイソメラーゼ活性を有することを明らかにした。本配糖体はアグリコンの3位、21位のアチル基、ならびに、28位の3カ所に糖部構造を有する配糖体で有るが、アルカリでケン化して28位の糖部を解裂させると活性が消去することより、この糖部は重要な役割を持つものと推定した。そこでJurlibroside Iをヨウ化リチウム、2、6ルチジン、アリルアルコールと共に加熱環流し、アグリコンから糖鎖をアリルグルコサイドとして切り出した。次に還元的アミノ化により生成したアミノ体とデカノイルクロライドを反応させ、N-アシル化を行い脂質のグルコサイドの合成に成功した。さらに、Julibroside Iの糖部をジオスゲニンならびにコレステロールに結合させることに成功した。目下、活性試験テスト中である。
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