研究概要 |
近年、α位にテロ原子団をもつホスホン酸誘導体は特異な生理活性を示すことから興味がもたれその合成は構造活性相関の面から活発に研究されている。私は、まずα-ヒドロキシホスホン酸およびα-アミノホスホン酸の新しい不斉合成を検討した。α,β-不飽和ホスホン酸エステルの不斉ジヒドロキル化反応を検討し、高いエナンチオ選択性でα,β-ジヒドロキシホスホン酸を得た。シリルTBDS-C1でシリル化したところβ位の水酸基が位置選択的にシリル化させることが判明した。α位の遊離の水酸基を常法に従いアミノ基に変換し、β-ヒドロキシ-α-アミノホスホン酸誘導体を高収率かつ高エナンチオ選択的に得た(Synlett,1995,847-849に掲載)。ホスホノメチルアリルエーテルの[2,3]-Wittig反応によりα-ヒドロキシ-γ,δ-不飽和ホスホン酸誘導体を立体選択的に合成した。本反応は従来合成が困難であったα,γ,δ-置換ホスホン酸類の新しい立体選択的合成法を確立したもので付加価値の高い反応である(Synlett,1995,1035-1036に掲載)。α,β-不飽和ホスホン酸の二重結合をラジカルアクセプターとして活性し、分子内ラジカル環化反応により2-デオキシリボ-ズ-3-ホスホン酸誘導体を合成した。さらにチミヂンを付けヌクレオチドとした。本化合物はDNAの糖鎖部分の修飾に有効な示唆を与える化合物で今後アンチセンス分子の創製に利用できると考えている(Synlett,1995,1280,1282に掲載)。一方で、私はグルタミン酸受容体のサブタイプの一つであるNMDA受容体拮抗剤の合成を目的に既存のω-ホスホノ-α-アミノ酸の最安定分子構造を分子力場計算で求め、それらの結果に基づいてNMDA受容体拮抗剤を分子設計し、ω-ホスホノ-α-アミノ酸の不斉合成をおこなった(Tetrahderon: Asymmeteryに掲載)。
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