研究概要 |
ラジカル環化反応における立体化学の制御、特に「不斉合成」は一般に困難とされ、その成功例は少ない。申請者らは最近、窒素原子上や側鎖にキラル中心を有するN-ビニル-a-ブロモアミドが4-exo-trig型ラジカル環化反応を起こして光学活性β-ラクタムを与えることを見いだし、この反応がカルバペネム系抗生物質(+)-PS-5や(+)-thienamycinの光学活性体の合成に応用できることとを示した。本研究はこのような「不斉ラジカル環化反応」をより広く検討し、(-)-1β-methylcarbapenemをはじめ、他の生理活性アルカロイドの光学活性体の合成に展開しようとするものである。平成8年度中に得られた具体的な成果について以下に列挙する。 1,(2R,3S)-3-acetoxy-2-bromo-N-[2-(m-methoxyphenyl)-1-propenyl]butanamideのラジカル環化反応を行うと、(3S,4R)-2-azetidinoneが主成績体として得られ、これを(+)-thienamycinの重要合成中間体に導いた。 2,窒素原子上にキラル補助剤として(S)-1-(1-naphthyl)ethyl基をもつN-(cyclopenten-1-yl)-α-bromoacetamideのラジカル環化反応は92:8のジアステレオ選択性でoctahydroindol-2-one誘導体を与えた。 3,窒素原子上にキラル補助剤として(S)-1-(1-naphthyl)ethyl基をもつN-(cyclohexen-1-yl)-α-bromoacetamideのラジカル環化反応は61:39のジアステレオ選択性で(1S,5S)-2-azabicyclo[3.3.0]octan-3-one誘導体を主成績体として与えた。
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