研究概要 |
1.Meerwein-Ponndorf-Verley(MPV)還元は古い反応であるがガルボニル基の重要な還元反応の一つである。しかしながらキラルアルコールを不斉源として用いた不斉MPV反応の鏡像体過剰率は20%以下であることが報告され、高選択的な不斉還元反応は実現されていなかった。高選択的不斉MPV反応を実現するためには遷移状態においてキラルアルミニウムアルコキシドとカルボニル化合物との間にキレーション構造の立体配座を固定することが重要であると考え、基質を固定するフッカーの役割を担う官能基としてメルカプト基をキラルアルコールに導入することを計画し種々検討した。(S)-カンファースルホン酸から誘導した光学活性メルカプトアルコールとα,β-不飽和カルボニル化合物をルイス酸(ジメチルアルミニウムクイロリド)を用いて反応させたところ、新しい高選択的不斉Tandem Michael-MPV反応を開発することができた。反応基質としては脂肪族、芳香族どちらの置換基を有するα,β-不飽和ケトンにおいても反応は良好に進行し(収率73-90%)、後述する還元的脱硫反応を行うことにより96-99%eeの高いエナンチオ選択性で光学活性二級アルコールを得ることができた(論文投稿準備中)。 2.還元的脱硫反応にはラネ-ニッケルが一般的に用いられているが二級アルコールをラセミ化することが知られている。この事実は有機イオウ化合物を用いる不斉合成において大きな問題点となっている。そこで、水素源として次亜リン酸ナトリウム-酢酸緩衝液を用いてラネ-ニッケルを反応させる反応剤が脱硫反応において二級アルコールのラセミ化を完全に防止できることを見いだした。(Tetrahedron Letters印刷中)。 3.光学活性メルカプトアルコールを用いた光学活性モノチオアセタールの新反応剤AgNO_2-I_2系による光学活性α-ヒドロキシアルデヒドの合成を行った(Heterocycles投稿中)。
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