多置換カルバゾール合成への新しい合成戦略として、アレン中間体を経由する新規ビスビニルインドール誘電体の電子環状反応を計画し、検討した。その結果、アレン中間体の前駆体3-アルケニル-2-プロパルギルインドールで種々検討したところ、t-BuOK存在下加熱する条件により高収率で多置換カルバゾールへ変換できることが判明した。このようにして得られたカルバゾール誘電体の1-位へのアルキル側鎖およびフェニル基の導入は、鈴木らのクロスカップリング反応を応用することににより、多置換カルバゾール系天然物の中のカラゾスタチンおよびヒエラゾールの全合成に成功することができた。また、本法を応用し、カルバゾキノシンB-Fの全合成にも成功した。 更に、アンチノスタチン群、ネオカラゾスタチン群の合成に対して、まず四環性オキサゾロカルバゾールの合成を検討した。すなわち、2-ホルミル-3-ヨードインドールとN-SEM-オキサゾロンとのクロスカップリング反応を行ったところ、位置選択性は見られず二種のカップリング成績体を与えた。両者を分離し、3-オキサゾリル-2-プロパルギルインドールへそれぞれを誘導し、前述同様の電子環状反応に付したところ、いずれの場合も低収率ながら四環性オキサゾロカルバゾールへ導くことができた。両者の構造は各種スペクトルデータにより決定した。しかし、これまでの電子環状反応の条件では、収率の向上を確認できなかった。そこで、t-BuOKの代りにテトラブチルアンモニウムフルオリドを利用したところ、収率の向上が確認できた。現在、二種の四環性オキサゾロカルバゾールの1-位へのアルキル側鎖の導入とオキサゾロン環の開環の条件を検討中である。
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