デュオカルマイシンSAは1990年、放線菌の一種から単離された強力な抗腫瘍性抗生物質である。我々は、マイトマイシンCやアドリアマイシンを遥かに凌ぐと云われるデュオカルマイシンSAの顕著な細胞毒性、並びにCC-1065等と共通のシクロプロパジエノンpharmacophoreに興味を抱き、独自の手法を組み込んだデュオカルマイシンSAの全合成、及びその活性の増強と選択性向上を目指した種々類縁体の調製を検討している。 (1)デュオカルマイシンSAの2種不斉全合成ルート(第一世代、第二世代)を確立した。ジヒドロピリジンに対する酸化的求核試剤導入法を応用した第一世代合成法に加え、平成7年度に完成した第二世代ルートは、Lーリンゴ酸を不斉源とするキラルプール法であり、独自に確立した高度官能基化インドール閉環法を活用することにより、デュオカルマイシン系抗生物質では初の光学分割に依らない光学活性体合成である。この合成ルートの確立は、これまで他類縁体の絶対構造から類推されていたに過ぎないデュオカルマイシンSAの絶対構造の最終的な確定をも意味する。 (2)既に報告したフラン類縁体に加え、新規にデュオカルマイシンSAのA環部(ピロール環)をチオフェン環に換えた誘導体を上記第一世代合成ルートに準じて合成した。現在、その細胞毒性を評価すべく準備中である。 (3)更に我々は、デュオカルマイシンSAの実用的短工程合成ルート(第三世代ルート)を開拓すべく鋭意検討中である。
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